乳がん・薬物療法
乳がんの薬物療法には何がある?
ホルモン療法・分子標的薬・抗がん剤・免疫療法
乳がんの治療で「薬物療法」と聞くと、点滴の抗がん剤を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、乳がんに使われる薬には、ホルモン療法薬、分子標的薬、細胞障害性抗がん薬、免疫チェックポイント阻害薬などがあり、働きや使われる条件は異なります。
本記事は、国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」を出典として、乳がんの主な薬物療法と、治療を理解するためのポイントを紹介します。ここでは、一般に「抗がん剤」と呼ばれることの多い細胞障害性抗がん薬を、ほかの薬と分けて説明します。
薬物療法は、何を目的に行う?
薬物療法は、多くの場合、全身に作用する治療です。乳がんでは、手術前にがんを小さくする、手術後の再発リスクを下げる、進行・再発したがんの進行を抑えて症状を和らげるなどの目的で行います。
国立がん研究センターでは、薬物療法を手術前・手術後に行う理由や、ほかの治療と組み合わせる考え方について情報が提供されています。手術で目に見えるがんを切除した後でも、確認できない小さながん細胞に対応するため、薬が必要になる場合があります。
同じ乳がんでも、全員が同じ薬を使うわけではありません。治療を理解する第一歩は、「自分の場合、何のためにこの薬を使うのか」を確認することです。
ホルモン療法:がんが利用するホルモンの働きを抑える
ホルモン療法は、女性ホルモンを利用して増殖する「ホルモン受容体陽性」の乳がんに対して、効果が期待できる治療です。「内分泌療法」とも呼ばれます。
薬によって、体内のエストロゲンの量を減らしたり、がん細胞に対するエストロゲンの働きを妨げたりします。閉経前と閉経後では、エストロゲンが作られる経路が異なるため、薬の選択も変わります。内服や注射で行い、病状によっては分子標的薬などを組み合わせます。
副作用として、ほてり、関節痛、骨に関する症状などが起こることがあります。「飲み薬だから副作用はない」と考えず、日常生活で困っている症状を医療者に伝えましょう。治療期間や検査の予定も、使用する薬や治療の目的に応じて確認することが大切です。
分子標的薬:がんの増殖に関わる仕組みを狙う
分子標的薬は、がんの発生や増殖に関わるタンパク質などを標的に、その機能を抑える薬です。標的となる特徴があるかどうかが、薬を選ぶ上で重要になります。
乳がんでは、HER2というタンパク質が増殖に関わる「HER2陽性」の場合に、抗HER2薬を使います。また、ホルモン療法と組み合わせる分子標的薬や、BRCA1・BRCA2遺伝子の変化など、一定の条件に応じて検討される薬もあります。分子標的薬には複数の種類があり、全てがHER2を標的にするわけではありません。
国立がん研究センターでは、がん細胞を認識する抗体に細胞障害性抗がん薬を結合させた「抗体薬物複合体」についても情報が提供されています。薬の分類には、複数の働きを持つものも含まれます。
副作用は薬によって異なります。標的となる分子が正常な細胞にもあるため、分子標的薬でも副作用は起こります。どの症状に注意するかを、薬ごとに確認しましょう。
抗がん剤:細胞が増える仕組みを妨げる
細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みの一部を妨げ、がん細胞を攻撃する薬です。こうした薬を使う治療は「化学療法」とも呼ばれます。
乳がんでは、ホルモン受容体とHER2が陰性の「トリプルネガティブ乳がん」の治療などに使われます。ほかのタイプでも、再発リスクや病状に応じて使う場合があり、HER2陽性乳がんでは抗HER2薬と組み合わせることが一般的です。「ホルモン療法が使えるから、抗がん剤は必ず不要」とは言い切れません。
正常な細胞も影響を受けるため、吐き気、口内炎、脱毛、しびれ、血液細胞の減少などが起こる場合があります。ただし、全ての副作用が全員に出るわけではありません。薬の種類や個人の状態で異なり、吐き気止めなどで予防・軽減できる症状もあります。
免疫療法:免疫ががんを攻撃する力を保つ
乳がんの薬物療法で使われる免疫療法の一つが、「免疫チェックポイント阻害薬」です。がん細胞が免疫にかけるブレーキを外し、免疫細胞ががんを攻撃できるようにする働きがあります。
乳がんでは、トリプルネガティブ乳がんで使われることがあります。ただし、全ての患者に適するわけではなく、病状や検査結果などを踏まえて判断されます。自分が対象になるか、どの薬と組み合わせるかは担当医に確認してください。
免疫反応ががんのない部位でも強くなり、炎症などの副作用が起こることがあります。治療前とは違う症状があれば、早めに医療者へ連絡しましょう。
国立がん研究センターでは、科学的に効果が確認された免疫療法と、効果が証明されていない免疫療法を区別して説明しています。提案された治療の根拠や位置付けを確かめることが大切です。
薬は、がんの性質と本人の状態に合わせて選ぶ
病理検査では、採取した組織を調べ、がんの性質を確認します。薬の選択には、ホルモン受容体やHER2などの情報に加えて、病期、再発リスク、これまでの治療、体の状態などが関わります。希望や生活環境も含め、担当医と話し合って決めます。
治療前には、次のことを確認しておきましょう。ほかの病気や服用中の薬、サプリメントについても伝えてください。
- 期待できる効果
- 治療の期間・通院頻度
- 起こりやすい副作用
- 病院に連絡する症状と連絡先
通院しながら治療を受ける人も増えています。仕事や家事を続けていても、体調が悪いときに無理をする必要はありません。国立がん研究センターでは、乳がんの薬物療法中の生活や、副作用への対応についても情報が提供されています。
疑問やつらさを医師・薬剤師・看護師に伝え、必要に応じてがん相談支援センターも利用しながら、治療を受けていきましょう。
出典:国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」(乳がん 治療、薬物療法、薬物療法 もっと詳しく、免疫療法、乳がん 検査、乳がん 療養)(情報確認日:2026年10月9日)