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IROHA 保存版ガイド / 腫瘍マーカーとは?

腫瘍マーカーの検査結果と採血管のイメージ

腫瘍マーカーとは?
検査の意味・数値の見方・注意点を徹底解説【保存版】

2026年10月17日公開・IROHA編集部(米国国立がん研究所、日本泌尿器科学会、各種ガイドライン・研究論文をもとに作成)

血液検査の結果に並ぶ「CEA」「CA125」「CA15-3」といった項目。数字が少し高いだけで不安になったり、反対に正常で安心しきったりしていませんか。腫瘍マーカーは、目的と読み方を知っていれば、治療の経過を見守る心強い味方になる検査です。この記事では、腫瘍マーカーの基本から上手な付き合い方まで、何度でも読み返せるようにまとめました。

この記事のポイント
  • 腫瘍マーカーは、がんの診療を補助する検査。単独で「がんがある・ない」を決めるものではない
  • 治療前の値を基準に、治療中・治療後の推移を見ることで力を発揮する
  • 1回の値より「変化の流れ」。同じ施設・同じ測定方法で比べるのが基本
  • 高くても慌てず、正常でも過信せず。症状や画像検査と合わせて医師が判断する

腫瘍マーカーとは

腫瘍マーカーとは、がん細胞が作り出す物質や、がんに反応して体の細胞が作る物質などを測り、がんの診療に役立てる指標のことです。ふだん「腫瘍マーカー」と呼ぶときは、採血で測るCEA・CA19-9・CA125・AFP・PSAなどを指すことが多いですが、広い意味では、がん組織で調べるHER2やホルモン受容体、遺伝子の変化なども含まれます。

種類主な例主な役割
血液で測るものCEA、CA19-9、CA125、CA15-3、AFP、PSA、SCC、CYFRA、NSE など診断の補助、治療効果や再発の目安
がん組織で調べるものホルモン受容体、HER2、PD-L1 などがんのタイプ分け、薬の選択
遺伝子を調べるものEGFR、BRCA、MSI など分子標的薬・免疫療法などの選択

この記事では、主に血液で測る腫瘍マーカーについて解説します。多くは通常の採血で測ることができ、体への負担が少ないのも特長です。

腫瘍マーカーが力を発揮する場面

腫瘍マーカーは「何のために測るか」がはっきりしているとき、とても役に立つ検査です。代表的な場面を紹介します。

  1. 治療前の「基準値(ベースライン)」として
    診断がついた後、治療前に測っておくと、その後の変化を比べる物差しになります。治療前に上がっていたマーカーは、その人のがんの状態を映しやすい「自分専用の目印」になります。
  2. 治療中の効果の目安として
    抗がん剤などの治療中に値が下がっていけば、治療が効いている手がかりの一つになります。画像検査と組み合わせて、病状の変化を確認します。
  3. 治療後の経過観察として
    大腸がんの治療後のCEAや、前立腺がんの治療後のPSAは、再発の手がかりとして広く活用されています。特にPSAは、画像で見えるより早く変化を捉えることがあります。
  4. リスクの高い人の定期チェックとして
    肝細胞がんになりやすい慢性肝疾患の方では、超音波検査とAFPを組み合わせて、おおむね6か月ごとに確認する方法が米国肝臓学会(AASLD)のガイダンスで推奨されています。
ポイント:腫瘍マーカーは、症状・診察・画像検査と組み合わせることで真価を発揮します。チームの一員として、医師の判断を支える情報だと考えるとイメージしやすいでしょう。

主な腫瘍マーカー一覧

参考基準値は検査会社の案内に掲載されている一例です。病院や測定方法によって異なるため、実際にはお手元の検査結果票に記載された基準値を確認してください。基準値は「これを超えたらがん」という線ではありません。

マーカー主に関係するがん参考基準値の例主な使われ方がん以外で上がる例
CEA大腸がんなどの消化器がん、肺がん、乳がん5.0 ng/mL以下治療効果の目安、特に大腸がん治療後の経過観察喫煙、炎症、肝臓の病気
CA19-9膵がん、胆道がん37 U/mL以下画像検査と合わせた診断の補助、治療の経過胆石、胆道の詰まり、慢性肝炎、糖尿病
CA125卵巣がん35 U/mL以下診断の補助、治療効果、経過観察月経、妊娠、子宮内膜症
CA15-3乳がん25.0 U/mL以下主に進行・転移した乳がんの経過の目安良性の病気などでも上がることがある
SCC子宮頸がん、頭頸部・食道・肺などの扁平上皮がん測定方法により異なる(例:2.5 ng/mL以下)病状や再発の目安皮膚の病気など、扁平上皮に関わる良性の病気
AFP肝細胞がん10 ng/mL以下高リスクの方の定期チェック(超音波と併用)慢性肝炎、妊娠
PSA前立腺がん4.00 ng/mL以下(年齢などで判断)検診、診断の補助、治療後の経過観察前立腺肥大症、前立腺炎、射精、自転車などの刺激
CYFRA肺がん(特に非小細胞肺がん)3.5 ng/mL以下診断の補助、治療の経過一部の良性の肺の病気など
NSE小細胞肺がん、神経内分泌腫瘍16.3 ng/mL以下治療の経過の目安採血した血液の溶血

数値の見方:大切なのは「推移」

腫瘍マーカーは、1回の数字よりも時間の流れの中での変化を見ることで、ぐっと読み取りやすくなります。たとえば「基準値5.0のCEAが5.3だった」ことと、「大腸がんの手術後にCEAが2→4→8→15と上がり続けている」ことでは、意味がまったく違います。

  • 過去の値と比べる:前回・前々回からの流れを見ます。結果票は捨てずに保管しておくと役立ちます。
  • 同じ施設・同じ測定方法で比べる:測定方法が変わると数値が変わることがあります。
  • 自分のがんで上がっていたマーカーかを知る:治療前に上がっていなかったマーカーは、その人のがんの目印になりにくいことがあります。
  • 体の状態や生活の影響も考える:炎症、良性の病気、喫煙、月経・妊娠、服用中の薬などで値が変わることがあります。

「高い」と言われたとき、「正常」と言われたとき

高いと言われたら:まずは落ち着いて確認を

基準値を超えていても、それだけでがんと決まるわけではありません。医師は次のような順番で情報を整理して判断します。

  1. 何のために測った検査か
  2. 過去の値と比べてどう変わったか
  3. 症状はあるか、がんの治療歴はあるか
  4. 良性の病気や薬、採血のタイミングなどの影響はないか
  5. 必要に応じて、同じ方法での再検査や画像検査を行う

一時的な上昇は珍しくありません。たとえばPSAが一度高かった場合、米国国立がん研究所(NCI)は、6〜8週間後の再検査も選択肢の一つとして紹介しています。

正常と言われたら:安心材料の一つとして

正常値は「この検査では異常が見つからなかった」という意味で、良い知らせの一つです。ただし、早期のがんや、そのマーカーを作らないがんもあるため、がんがないことの証明ではありません。気になる症状があるときは、数値にかかわらず医師に伝えましょう。

女性のがんと腫瘍マーカー

卵巣がんとCA125

CA125は卵巣がんの診断の補助や、治療の効果、治療後の経過を見るのに役立つマーカーです。一方で、月経や妊娠、子宮内膜症などでも上がるため、「CA125が高い=卵巣がん」ではありません。英国の大規模な研究(UKCTOCS)では、症状のない一般の女性がCA125を含む検診を受けても、卵巣がんによる死亡を減らすことは確認できませんでした。また治療後に、CA125の上昇だけを理由に早めに治療を始めても、生存期間は変わらなかったという研究(MRC OV05/EORTC 55955)もあります。数値の変化は、主治医と相談しながら落ち着いて受け止めればよいことを示す結果といえます。

子宮頸がんとSCC

SCCは子宮頸がんなどの扁平上皮がんで、病状や再発の目安として使われます。検診や確定診断の代わりにはなりませんが、治療前に上がっていた方では、経過を見る手がかりになります。

乳がんとCA15-3・CEA

CA15-3やCEAは、主に進行・転移した乳がんで、病状の変化を補助的に追うために使われます。乳がん検診や早期乳がんの診断には向いていません。また、症状のない早期乳がんの治療後に、これらのマーカーを定期的に測って再発を探すことは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドライン(2026年改訂)でも日常的には推奨されていません。術後の経過観察は、診察や乳房の画像検査などを組み合わせて行います。乳がんのタイプと治療については「乳がんの「サブタイプ」を解説」、術後の経過観察については「乳がん術後の経過観察はどう受ける?」もご覧ください。

検診で「全部測る」はおすすめ?

「念のため、腫瘍マーカーを全部測っておけば安心」と考えるのは自然なことです。ただ、健康な人ががんを探す目的で多くの腫瘍マーカーを測ることは、一般的には勧められていません。がんでなくても高く出ることがあり、そこから再検査、CT、内視鏡などの検査が続いて、体と心の負担が増えることがあるためです。

腫瘍マーカーは、対象と目的を絞ったときにこそ力を発揮します。健康な方は、年齢や性別に合った、効果が確かめられたがん検診(乳がん検診、子宮頸がん検診など)を受けることが基本です。前立腺がんのPSA検診のように、メリットとデメリットを理解したうえで受けるかどうかを決める検査もあります。

診察で聞いておきたいこと

腫瘍マーカーについて医師と話すときは、次のような質問が役立ちます。

  • この腫瘍マーカーは、何のために測っていますか?
  • 私のがんでは、治療前にこのマーカーは上がっていましたか?
  • 今回の値は、前回と比べてどう変わりましたか?
  • 値が上がった(下がった)場合、次にどんな検査や対応を考えますか?
  • がん以外で値に影響しそうなこと(病気・薬・生活)はありますか?
結果票は大切に保管を:検査結果票を時系列で残しておくと、自分の値の流れが分かり、医師との話し合いもスムーズになります。

よくある質問

腫瘍マーカーが高いと言われました。がんということですか?

いいえ、高い値だけでがんと決まるわけではありません。腫瘍マーカーは炎症や良性の病気、喫煙、月経・妊娠などでも上がることがあります。過去の値との比較、症状、画像検査などを合わせて医師が判断します。まずは落ち着いて、何が考えられるかを担当医に確認しましょう。

正常値なら「がんはない」と考えてよいですか?

正常値は「この検査では異常が見つからなかった」という意味で、がんがないことの証明ではありません。早期のがんや、そのマーカーを作らないタイプのがんもあります。気になる症状がある場合は、腫瘍マーカーが正常でも医師に相談してください。

検診で腫瘍マーカーをたくさん測れば安心ですか?

健康な人が「がん探し」のために多くの腫瘍マーカーを測ることは、一般的には勧められていません。がんでなくても高く出ることがあり、追加の検査や不安につながるためです。年齢や性別に合った、効果が確かめられたがん検診を受けることが基本です。

乳がんの手術後、CA15-3やCEAを毎回測ってほしいのですが?

症状のない早期乳がんの治療後に、腫瘍マーカーを定期的に測って再発を探すことは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインでは日常的には推奨されていません。経過観察の内容は、病状や治療内容に合わせて主治医と相談して決めましょう。

前回と違う病院で測った値と比べてもよいですか?

大まかな比較はできますが、病院や検査会社によって測定方法や基準値が異なることがあります。小さな変化を見るときは、できるだけ同じ施設・同じ測定方法で経過を追うと判断しやすくなります。

まとめ

腫瘍マーカーは、がんそのものを直接判定する検査ではなく、がんの診療の場面で、ほかの情報と組み合わせて判断の精度を高める補助検査です。何のために測ったのか、治療前には上がっていたのか、継続して変化しているのか。この視点を持つだけで、検査結果の数字はぐっと意味のある情報になります。不安なときは一人で抱え込まず、担当医やがん相談支援センターに相談してください。

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