会社員として働きながら、Instagram「katy_shonanlife」で「100日後にヒールでお出かけする」という挑戦を発信している、ケイティこと清家 和美さん。甲状腺がんの手術から約1年。その歩みの背景には、がんの治療後に心の病を抱え、亡くなったお兄さまの存在がありました。
「死ぬ時に笑える、っていうのが私のテーマで、今生きているので。死ぬ時笑えるように、楽しく生きていこうかなと思って」
2026年11月、ランウェイ「SPOTLIGHT」にCHALLENGER #1として出場する清家さんに、これまでの歩みと、今伝えたいことを伺いました。
- 清家 和美さん(ケイティ)/53歳。会社員として働きながら、Instagramでがん経験や日々の挑戦を発信
- 2025年夏、甲状腺乳頭がん(リンパ節への転移あり)と診断。手術でがんとリンパ節を取り、現在は服薬と定期的な通院で経過観察中
- やりたいことを「いつか」で終わらせない——「100日後にヒールでお出かけ」を目標に、体力づくりと心のリハビリを発信
- 2026年11月13日、ランウェイ「SPOTLIGHT」に出場(CHALLENGER #1)
兄の死と、「絶対に先に死ねない」という思い
清家さんががんとわかる2年前、お兄さまが胃がんになりました。がんの治療は終えたものの、その後、心の病を抱え、自ら命を絶ってしまったといいます。
「父はその悲しい姿を目の前で見ているので、私は絶対に父より先に死ねないなと思っていたんです。楽しく生きようとは思っていたけど、そのプレッシャーもどこかにありました」
がんと診断されたあとや治療を終えたあとに、強い不安や落ち込みが続くことがあります。本人だけでなく、そばにいる家族も同じです。一人で抱え込まず、担当医や看護師、がん相談支援センター、心の専門家に相談してください。
「死にたい」と感じるほどつらいときは、次のような電話相談もあります(厚生労働省「まもろうよ こころ」より)。
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間・無料)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(受付時間は都道府県により異なります)
「たまたま」見つかった甲状腺がん
首の腫れは以前から気になっていて、何度か受診したこともありました。けれど数値に異常はなく、「大丈夫ですよ」と言われていたそうです。別の不調で受診した際にあらためて相談し、紹介された甲状腺の専門医のもとで検査を受けたところ、甲状腺乳頭がんと診断されました。
「でも、誰にも言えなくて。家族をそういう形で亡くしているじゃないですか。私がそうなったらどうしようって思われたら嫌やなと思って、しばらく黙っていたんです」
自分の口からは伝えられず、夫に頼んでお父さまに伝えてもらいました。「私は大丈夫やから」——そう言いながらも、手術までの間は不安で泣いている日も多かったといいます。
甲状腺がん(乳頭がん)のこと
- 甲状腺がんは、多くの場合、自覚症状がありません。症状があっても、首のしこり以外はほとんどみられないとされています
- 甲状腺がんの中で最も多い乳頭がんは、がんの大きさや転移の有無などによってリスクが分けられ、それに応じて手術の範囲などの治療方針が決まります。首のリンパ節に転移がある場合は、リンパ節を切除する手術(リンパ節郭清)が行われます
- 首の腫れやしこりが続くときは、「前に大丈夫と言われたから」とそのままにせず、気になることを医師に伝えましょう
手術のあと——飲み込めない、声が出にくい
手術では甲状腺のがんと、転移していたリンパ節を取りました。術後に何より驚いたのは、水を飲み込めなかったことでした。
「お水飲んでいいですよって言われた時に、飲み込めないんですよね。こんなにしんどいんやと思って、すごいショックでした。食べられなくて、5キロぐらい痩せて。今はすごく食べられて、食べるのが嬉しくて幸せです」
首を傾けて飲むコツや食べ方のコツを教わりながら、少しずつ回復していきました。声が出にくかったり、乾燥すると違和感があったりすることは今もあり、のど飴や水分補給で自分なりに工夫しています。
最初はハイネックで隠していた首の傷も、今は「勲章」と思えるようになり、夏にはTシャツで出かけるようになりました。
支えになったのは、医師たちの言葉でした。最初に診てくれた甲状腺の医師は「今見つかってよかったね」と声をかけ、手術を担当した医師は「今からそんなことを考えていてもしょうがないから」と前を向かせてくれたといいます。
甲状腺の手術のあとに起こりうること
- 声を出す神経(反回神経)への影響で、声が出しにくくなったり、かすれたりすることがあります。多くの場合、6か月程度で回復するとされています
- 甲状腺をすべて摘出した場合は、甲状腺ホルモン薬を飲み続けて、ホルモンを補います。再発予防を目的にホルモン薬を使うこともあります
- 飲み込みにくさ、声の変化、手足のしびれなど、気になる症状は我慢せず、担当医に伝えましょう
「兄みたいにはならない」
不安の中で清家さんを支えたのは、考え方を学んでいたいとこの言葉や、本から得た「マインドセット」でした。食生活も見直し、それまで週2回は食べていたファストフードや、毎日飲んでいたコーラをやめたといいます。
「人は何かがきっかけで、一瞬で心がやられてしまうっていうのを目の前で見ているから、本当にそうならないように気をつけていました。今でも怖いなと思うし、だから自分の気持ちに向き合うことを、一番大事にしています」
そして、がんを経験したからこそ見えたこともありました。
「がんになって良かったとは思ってないけど、きっかけとしては良かったかな。兄の気持ちも分かったし、どう生きたいかも分かった。私が先にがんになっていたら、ほら、こうやってできたやんって、兄に言えたのになって。それはすごく思います」
「100日後にヒールでお出かけ」から、ランウェイへ
手術のあと、たまたま始めたInstagramの発信が楽しくなっていった清家さん。「100日後にヒールで歩きたい」という目標をリール動画で投稿したところ、SPOTLIGHTを主催する女性から「それならランウェイで歩きませんか」と声がかかりました。
「53にもなってドレス着てランウェイを歩くなんて、本当はすごく恥ずかしいんですよ。でも、ヒールで歩きたいって言ったら、ヒールで歩きませんかって言われる。こんな奇跡みたいなこともあるんやなと思って、出させていただくしかないなと」
一緒に歩く仲間の中には、今も治療を続けている人もいます。
「伝えたいのはもちろんやけど、私が得るものの方が大きいんじゃないかなと思っています。みんな笑って楽しく生きてるってすごいことやし、たくさんの人に見てほしいなと思います」
生き様を魅せるランウェイ「SPOTLIGHT」
- 日時:2026年11月13日(金)開場13:30/開演14:00
- 会場:大阪市中央公会堂
チケットなどの最新情報は、SPOTLIGHT公式サイトをご確認ください。→ IROHAのSPOTLIGHT紹介ページ
伝えたいこと——「がんになっても大丈夫」と思える世界に
「今がんじゃない人が、がんになっても大丈夫って思える世界であってほしい。目の前で心を病んでいく兄を見ているので、そうはなってほしくないんです」
清家さんがもうひとつ大切だと感じているのが、がんになった人の家族を支えることです。
「兄の時、父も兄のお嫁さんも、どんなにそばにいても、どうすることもできなかった。落ち込んでいる人の家族はすごく大変なんです。家族を支えてあげないと、家族の方も潰れてしまう。どっちもが笑っていられるようにしたいんです」
自分らしく生きることをあきらめず、「我慢して苦しまなくていい」と伝えたい。仕事で多くの人の話を聞いてきた経験も生かし、がんの人やその家族の話を聞き、支える活動をこれから形にしていきたいと話します。
これからがんになるかもしれない人へ
「今は2人に1人ががんになると言われている時代です。でも、なった時でも絶対大丈夫やから、自分自身に向き合ってほしい。もう私の人生終わりやって、絶対に思わんといてほしいです」
清家さんの発信——Instagram
- Instagram(@katy_shonanlife)——「100日後にヒールでお出かけ」の挑戦や、がん経験、日々の暮らしを発信
- ランウェイ「SPOTLIGHT」公式サイト
IROHAから読者へのメッセージ
大切な家族を亡くした悲しみと、自分ががんと告げられた不安。その両方を抱えながら、清家さんは「自分の気持ちに向き合う」ことで一歩ずつ前に進んできました。がんは体だけでなく、心にも、そして家族にも大きな影響を与えます。
- 首のしこりや腫れなど、気になる変化が続くときは、遠慮せずに医師に伝える
- 診断や治療のあとに、つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まずに相談する
- がんの人を支える家族も、自分の心と体を大切にし、相談先を持つ
- 手術後の飲み込みにくさや声の変化は、担当医に伝えて対処法を相談する
IROHAは、特定の治療法や医療機関を推奨・保証する立場ではありません。一人ひとりが必要な情報を知り、納得して選べるよう、体験談や情報を届けていきます。
「がんの情報」の出典:国立がん研究センター がん情報サービス「甲状腺がん」「甲状腺がん 治療」、相談窓口:厚生労働省「まもろうよ こころ 電話相談」(情報確認日:2026年10月4日)
この体験について、さらに深く知る
体験談から情報の整理、そして相談へ。3つのステップでつながります。