トレーナー・セラピストとして自分のお店を営み、3人の子どもを育てる西山 美樹さん。30代後半で乳がんと診断され、肺とリンパ節への転移があることから「ステージ4」と告げられました。それから3年。薬による治療を続けながら、お店はほとんど休むことなく開け続けています。
「本当は休みたいって、自分の心は言っていたのに、無視しちゃったんだろうなって思うんです。だから、できればいろんな人に言いたい。自分の味方は、自分なんだよって」
Instagramでは「ステージ4乳がんサバイバー」として、前向きに生きる日々を発信し、多くの人とつながっています。2026年11月、ランウェイ「SPOTLIGHT」にCHALLENGER #2として出場する西山さんに、これまでの歩みと、今伝えたいことを伺いました。
- 西山 美樹さん/トレーナー・セラピスト。トレーニングとリラクゼーションのお店を営み、オンラインでのトレーニング指導も行う。3人の子どもの母
- 30代後半で乳がんと診断。肺とリンパ節に転移があり、ステージ4。ホルモン受容体陽性のタイプで、手術ではなく薬による治療を続けている
- 2026年春ごろからInstagramで、ステージ4の乳がんと共に生きる日々を公開して発信
- 2026年11月13日、ランウェイ「SPOTLIGHT」に出場(CHALLENGER #2)
発症前——休んでいると、そわそわしてしまう
「とにかく、働くのが好きなんです」。発症前の西山さんは、インストラクターとして働きながら、パーソナルトレーナーとしてもほかの場所に通い、休みは月に2回ほど。家に帰れば、3人の子どもたちと家のことが待っていました。
「逆に、休んでいるとそわそわしちゃうくらい。体は本当は休みたいって言っているのに、頭では『いや、もうちょっと働きたいよね、楽しいもん』って。たぶん、自分で自分を追い詰めていたんだと思います。そのときは気づいていなかったけど」
自分のお店を開いて1年ほどがたったころ、予約はたくさん入っていました。お客さんから「この日に行きたい」と言われれば、どうにかスケジュールを組んで応えていたといいます。
発見——「良性だから大丈夫」のはずだった
胸のしこりには、なんとなく気づいていました。ただ、前の年の検診でも乳腺が詰まったようなしこりがあり、「軽い石灰化はあるけれど、良性だから大丈夫」と言われていたため、今回もそれだろうと思っていたそうです。
ところが半年ほどたつと、しこりは目に見えて大きくなっていました。お客さんには看護師さんが多かったものの、心配をかけたくない。そこで一人にだけ、そっと相談しました。
「『今こういう感じになってるんですけど、乳腺外科に行ったほうがいいと思います?』って聞いたら、『行ったほうがいい。しかも、早めに』って言ってもらえて」
乳腺外科で針生検を受け、結果が出るまでの1週間は、ちょうど帰省の時期と重なりました。両家の親に事情を話し、「たぶん大丈夫だと思うけどね」と話していたといいます。戻って再び受診すると、結果は「悪性」でした。
「前回は良性だった」しこりが変化したら
- 乳がん検診は、症状のない人ががんを見つけるためのものです。しこりが大きくなる、乳頭から血の混じった分泌物が出るなど、気になる変化があれば、次の検診を待たずに乳腺外科などを受診しましょう
- 以前の検査で「良性」と言われたしこりでも、大きさや形が変わってきたときは、あらためて受診して確かめることが大切です
- 忙しいときほど受診を後回しにしがちです。気になる変化は、早めに確かめておきましょう
くわしくは「「検診」と「気になる症状」は別もの。乳房の変化に気づいたら」をご覧ください。
告知——「仕事は、何か月休めばいいですか」
看護師さんに別室に呼ばれ、この病院では手術も治療もできないため、大きな病院で今後の治療を決めたほうがいいと説明を受けました。とても気を使って話してくれたことを覚えている、と西山さんは振り返ります。けれど、そのときの西山さんの頭の中は、驚くほど冷静でした。
「治療しなくてはいけない。でも私には、お店もある、家庭もある。だから『仕事は休まなきゃだめですか』『休むとしたら2か月ぐらいですかね』って、そんな話ばっかりしていて。看護師さんには『わかってる?』っていう感じで、抗がん剤をしたら動けない日も続くし、入院もしなきゃいけないって言われました。それでも、もしかしたら強がっていたのかもしれないけど、『仕事もやりたいし、たぶん私できるし』って思っていたんです」
ステージ4——「夢だと思った」
紹介先の大きな病院で、MRI、CT、PET検査、エコー、心電図と、いくつもの検査を受けました。抗がん剤をして、手術をして、何か月後かには復帰する——。そう覚悟を決めて、結果を聞きに行ったといいます。
「『肺に転移があります。リンパ節にも転移があります。ステージで言ったらステージ4です』って言われて。え?って。頭の中が真っ白になりました。本当に夢だと思ったし、これは現実じゃない、仮想現実の中だって。ステージ4って言葉だけ聞いたら、余命宣告のイメージが強かったので、『え、私、死ぬの?』って」
医師からは、ステージ4のため手術はせず、がんと「共存」していく治療を考えましょう、と説明を受けました。お薬から始めると聞いたとき、西山さんは、それを前向きに受け止めることを選んだといいます。
「言葉だけ聞いたら、すごくマイナスなことなんですけど。私は、そのときもポジティブに捉えたかったんですよね」
転移のある乳がん(ステージ4)の治療
- ほかの臓器への転移(遠隔転移)がある乳がんでは、薬物療法が治療の中心になります。がんの進行を抑え、症状をやわらげながら、その人らしい生活をできるだけ長く続けることが治療の目標です
- 使う薬は、ホルモン受容体やHER2の有無などのがんの性質(サブタイプ)によって変わります。ホルモン受容体陽性の場合は、ホルモン療法(内分泌療法)や、ホルモン療法と分子標的薬の組み合わせなどが検討されます
- 効果や副作用を見ながら、薬を切り替えて治療を続けていくことがあります。どの薬をいつ使うかは、担当医とよく相談して決めます
- 同じ「ステージ4」でも、がんの性質や転移の場所、体の状態によって経過は一人ひとり大きく異なります
治療——ホルモンを抑える薬と、お店を開け続けた日々
西山さんのがんは、ホルモン受容体陽性のタイプでした。お腹に打つ注射と、ホルモンを抑える飲み薬から治療を始めました。最初の説明では、ホルモンを抑えることで更年期のような症状が強く出ることや、体型が変わること、しんどい時期も多いだろうことを伝えられたといいます。
自営でお店を営む西山さんは、お客さんに迷惑をかけないよう、すべてを伝えることにしました。
「がんで、ステージ4で、っていうのを伝えて。お店は普段どおり開けるけど、直前に体調が悪くなって『今日は無理です』ってことが起きるかもしれません、って。でも結局、半分は気力だと思いますけど、お店を閉めたのは本当に無理だった1回だけ。それ以外は、全部いつもどおりにできていました」
半年ほどたったころ、肺の病変には効果が見え始めたものの、腫瘍マーカーが上がったため、次の段階の飲み薬と注射に切り替えました。新しい薬が合っていたのか、腫瘍マーカーは早い段階で基準値内に。さらに半年ほどたってCTを撮ると、肺のがんがあった場所が空洞のようになっていました。
「お医者さんって、『ない』とは言ってくれないんですよね。でも、ちゃんと収まっている、お薬は効いているよって。そこからもう、ポジティブ変換がとにかくすごくなってきて」
発信——50件の「よかったね」に背中を押されて
そのころ、西山さんのInstagramは、知っている人だけが見られる限定公開でした。治療の経過を報告すると、DMや公式LINEに「よかったね」というメッセージが50件ほど届いたといいます。
プライベートのアカウントで乳がんのことを書くうちに、同じ乳がんの仲間もできていました。定期的な検診の報告にコメントをもらい、互いに「わかる」と思いながら、良い結果が出たときには一緒に喜んでくれたそうです。
「私の場合は、自分がショックを受けるよりも、周りのほうがすごくショックを受けていて。それが私には、すごくショックだったんです。そういうのを見ちゃうと、本当にしんどいときに、しんどいって言えなくなる。同じように思っている人が、もしかしたらいるかもしれないなって」
2026年の春ごろ、西山さんは発信をオープンにしました。最初に投稿したのは、「ステージ4だけど、元気でやっています」という動画。公開から7か月ほどで、約4,000人がフォローしてくれたといいます。
「誰かのためになったらいいなっていうのも、もちろんあるんですけど。発信している言葉で、自分自身を励ましているところもあって。そこからですね、力強く言えるようになったのは」
落ち込んだ日も、痛みの不安も
いつも前向きに見える西山さんにも、どうしても前を向けない時期がありました。1〜2年ほど前、治療の影響もあったのか、いつも埋まっていた予約が急に埋まらなくなったことをきっかけに、気持ちがどんどん沈んでいったといいます。
「予約イコール自分の価値、みたいなところがあったんだと思います。誰とも喋りたくなくて、ひたすら泣いて。でも頭の片隅に冷静な自分がいて、『おや、これはおかしいぞ』って。それで先生に『私、今月本当にやばくて』って相談しました」
相談すると、がんの治療をしている人にはそうした心の波が来ることがあると説明され、院内の漢方外来につないでもらいました。眠れないときや、体の痛みが気になるときも、担当医と話しながら、必要なときに薬を使うようにしているそうです。
取材の2か月ほど前には、息をするのもつらいほどの痛みがあり、骨への転移が疑われたこともありました。結果的に転移ではありませんでしたが、そのときの不安が、西山さんの見方を変えました。
「そこでようやく、ほかのがんの治療をしている人の怖さがわかったというか。それがなかったら、ただの『ポジティブバカ』で、『みんな気にしすぎだよ、大丈夫だよ』って言っていたかもしれない。痛みや不安をしっかり味わえたから、逆に言えることが増えたと思います」
気持ちの落ち込みや痛みは、我慢せずに伝える
- がんの治療中は、病気や治療の影響、生活の変化などから、気持ちが大きく落ち込むことがあります。眠れない、何も楽しめない、つらい気持ちが続くといったときは、担当医や看護師に伝えましょう。心のケアの専門家につないでもらえることもあります
- 新しい痛みや続く痛みは、原因を確かめることが大切です。自己判断せず、早めに担当医に相談してください
- 漢方薬や睡眠薬、市販薬、サプリメントなどを使うときは、治療中の薬との飲み合わせもあるため、担当医や薬剤師に伝えておきましょう
- 担当医に言い出しにくいときは、全国のがん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」でも相談できます
受け取り方を、自分で選ぶ
インターネットで情報を調べすぎて、不安が大きくなってしまう人も少なくありません。西山さんも、調べることは調べるといいます。けれど、悪い経過の話はあまり見ず、「この薬にはこういう役割があるんだ」というところで止めるそうです。
「重く受け取ろうと思ったら、重く受け取れるんですけど。重く受け取った先が苦手なのは、自分でわかっているので。人からもらった言葉を重く取ると、自分がしんどくなるだけ。もちろん、ネガティブな感情は自分の中にも絶対にあるし、見て見ぬふりをしたらまずいのもわかってはいるんですけど」
治療を始めてから、体重は5〜6キロ増えました。以前の細い体型を思うと、最初は受け入れられない自分もいたといいます。
「でも、そのおかげで『健康な人より健康そうだね』って言われるんです。最初は嫌味かなって思ったりもしたけど、受け入れたら楽ですよね。たぶんこれって、乳がんにならなかったらわからなかったこと。今は、乳がんにめちゃめちゃ感謝しています」
トレーナーとして伝えたい、「動く」こと
トレーナーとして、西山さんは「動くこと」が心にも体にもいいと感じています。運動している間は、その瞬間に集中でき、雑念が消えやすい。ずっと考え込んでしまうくらいなら、少し体を動かしたり、絵を描いたり、何かひとつ集中できることがあったほうがいい、と話します。
「ウォーキングで全然いいと思うんです。20分くらい歩けたら万々歳。つま先立ちをするカーフレイズなら、10回でもいい。手首を動かす、足首を動かす、首を動かす。それだって、動かしているから運動なんですよ。自分で動けないときは、マッサージやリラクゼーションで巡りを良くしてもらうのもひとつの手だと思います」
お店に通うのは、40〜50代を中心に、健康寿命を延ばしたいという人が多いそうです。更年期の不調の緩和や、将来の骨折などを防ぐためのトレーニング、体のメンテナンスを行っていて、がんの治療中の人も訪れています。オンラインでは、自重トレーニングを中心に、楽しく続けられるよう一緒に体を動かしています。
治療中に体を動かすときの注意
- 体調に合わせて体を動かすことは、体力の維持や気分転換に役立つことがあります。ただし、どのくらい動いてよいかは、病状や治療の内容、その日の体調によって一人ひとり異なります
- 骨への転移がある、貧血や強い倦怠感がある、発熱しているなどのときは、運動を控えたほうがよい場合があります。始める前に、担当医やリハビリの専門職に確認しましょう
- 痛みや息切れ、めまいなどがあるときは無理をせず、すぐに中止してください
ランウェイ「SPOTLIGHT」へ
ランウェイへの出場は、主催のえりこさんからの声かけがきっかけでした。えりこさんが描く構想を聞いたとき、その光景が目に浮かび、涙があふれたといいます。
「えりこさんに、『みきさんの今の状態も、言葉も、きっと勇気づけられる人がいると思う。だから声をかけた』って言ってもらえて。それがすごくうれしくて。本当にそういうことができるんだったら、出ますって」
生き様を魅せるランウェイ「SPOTLIGHT」
- 日時:2026年11月13日(金)開場13:30/開演14:00
- 会場:大阪市中央公会堂
チケットなどの最新情報は、SPOTLIGHT公式サイトをご確認ください。→ IROHAのSPOTLIGHT紹介ページ
まだがんに直面していないあなたへ
「たぶん、みんなと同じことを言うと思うんですけど。自分の心の声を、とにかく無視しないでほしい。本当は休みたいと思っているなら休んでほしいし、責任感だけで動いているものがあるなら、やめてほしい」
トレーナーとして、食事や体調管理には人一倍気をつけていたという西山さん。それでも病気になったことを振り返り、今は「自分に正直に生きること」の大切さを感じているといいます。
「子どものためとか、誰かのためを思うなら、とにかく自分を大切にしてください。誰かに幸せにしてもらおうとか、誰かを幸せにしようとかよりも、まず自分を幸せにしないと、何もできないので。それができていたら、勝手に周りも幸せになっていくから」
西山さんの発信・活動
西山さんのInstagramでは、「潜在意識で現実を変える ステージ4乳がんサバイバー」として、日々の気づきや、前向きに生きるためのヒントが発信されています。
- Instagram(@miki32mani)——ステージ4乳がんサバイバーとしての発信
- お店のInstagram(@mani320316)——トレーニング・リラクゼーション
- 公式LINE
- 魔法の教室(外部サイト)
- mani mikiのお家(外部サイト)
- ランウェイ「SPOTLIGHT」公式サイト
IROHAから読者へのメッセージ
- 以前「良性」と言われたしこりでも、大きくなるなどの変化があれば、早めに受診する
- ステージ4と告げられても、治療の目標や選択肢は一人ひとり違う。わからないことは担当医に尋ね、必要ならセカンドオピニオンも活用する
- 気持ちの落ち込みや眠れないこと、新しい痛みは、我慢せずに担当医に伝える
- 体を動かすときは、病状や体調に合わせて、どこまで動いてよいかを担当医に確認する
IROHAは、特定の治療法や医療機関を推奨・保証する立場ではありません。一人ひとりが必要な情報を知り、納得して選べるよう、体験談や情報を届けていきます。
「がんの情報」の出典:国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん」「乳がん 治療」「薬物療法(抗がん剤治療)」「がん相談支援センターで相談できること」(情報確認日:2026年10月9日)
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