幼稚園の子から高校生まで、子どもたちに英語を教えている中村 早希さん。2026年の春、独立に向けて走り続けていたさなかに、ステージ4の子宮頸がんと診断されました。感染症での入院、1〜2日で迫られた出産の希望をめぐる決断、そして抗がん剤治療。つらい時期を前向きに過ごせた一番の支えは、生徒たちの存在だったといいます。

「私の言葉や行動で、勇気づけられる人が一人でも増えたらうれしい。それに、私は生徒たちにすごく支えられてきたので、子どもたちにも勇気や希望を届けられたらいいなって思っています」

Instagramでは「life is beautiful!」を合言葉に、がん経験者としての思いや日々の美しい瞬間を発信しています。2026年11月、ランウェイ「SPOTLIGHT」にCHALLENGER #12として出場する中村さんに、これまでの歩みと、今伝えたいことを伺いました。

プロフィール
  • 中村 早希さん/英語講師。幼児から高校生までの子どもたちに英語を教える。2026年春に独立し、オンラインでレッスンを行う
  • 2026年4月、子宮頸がんと診断。子宮から膀胱にかけて腫瘍があり、ステージ4。感染症の治療で約1か月入院したのち、抗がん剤治療(6クール)を受けた
  • Instagramとnoteで、がん経験者としての思いや、カフェ・食・アート・京都など好きなものを発信
  • 2026年11月13日、ランウェイ「SPOTLIGHT」に出場(CHALLENGER #12)

発症前——がんは、まったく身近ではなかった

家族や親族にも、身近な人にも、がんを経験した人はいませんでした。中村さんにとって、がんは「自分がなる」とは考えたこともないものだったといいます。

食事は健康的なものを好んでとり、体を動かすのも好きで、定期的に運動もしていました。診断がわかったとき、友人からは「あの生活でもなるの?」と言われ、中村さん自身も「何がいけなかったんだろう」と何度も考えたそうです。

振り返って思い当たることがあるとすれば、体調を崩す半年から1年ほど前からの過ごし方でした。それまでのフランチャイズの英語教室の仕事を続けながら、独立に向けた準備を同時に進めていたのです。

「神経もすり減らしていたし、体力的にも『今やらなきゃ』っていう気持ちで、結構追い込まれていたと思います。ちょっと体調が優れないなって思ったときもあったんですけど、このくらいで休めない、今休んじゃだめだって。突っ走っていたところはありますね」

発見——お腹の激痛と、長引いた検査

2026年3月の終わり、突然お腹に激痛が走りました。それでも1日目は、薬で痛みを抑えて我慢したといいます。

「女性って、お腹の痛みは割と我慢しちゃうことが多いんですよ。だから1日目は、これくらい我慢しようって。でも2日目、3日目と続いたので、病院に行きました」

最初に疑われたのは、子宮頸がんではなく悪性リンパ腫でした。別の診療科で検査を進め、細胞を調べた結果、悪性リンパ腫ではないことがわかります。診断がつくまでに、痛みが出てから1か月ほどかかりました。

がんの情報

子宮頸がんは、初期には症状がないことが多いがん

  • 子宮頸がんは、初期にはほとんど症状がないことが多く、進行すると、不正出血やおりものの変化、下腹部の痛みなどが現れることがあります
  • そのため、症状がないうちから定期的に検診を受けることが大切です。国の指針では、20歳以上の女性は2年に1回の子宮頸がん検診(細胞診)が推奨されています。30〜60歳を対象に、HPV検査による検診(5年に1回)を導入している自治体もあります
  • いつもと違うお腹の痛みや出血が続くときは、検診を待たずに、早めに医療機関を受診しましょう

くわしくは「子宮頸がん|病状で知る・つながる」をご覧ください。

告知——「私のことですか?」

悪性リンパ腫の疑いがあったころ、その科の医師からは「1年後には、普通に生活している人もたくさんいるから大丈夫」と声をかけられていました。だからこそ、子宮頸がんとわかったときも、中村さんはそれほど重く受け止めていなかったといいます。

診察には、お母さんが付き添ってくれました。ステージ4と告げられ、何も聞けずにいた中村さんの横で、お母さんが「ステージ4ということは、進行しているということですか」とまっすぐに尋ねました。

「先生が『残念ながら、そうです』って。その先生の顔とか、『残念ながら』っていう言葉を聞いて、あ、大変なことなんだなって。その瞬間は受け入れられなかったです。私のことですか?って、どこか他人事みたいな感じがしていました」

まず、感染症の治療から

診断を受けた総合病院で、中村さんはすぐに入院することになりました。子宮から膀胱にかけてできた腫瘍が膀胱を圧迫したことで、感染症を起こしていたのです。がんの治療より先に、まずは感染症を治さなければ命に関わる状態でした。

「その時間は、本当に記憶がほぼないんです。吐き気が止まらなくて、夜も眠れなくて、ずっとトイレにこもっているような状態で。毎日点滴につながっていたのは覚えています。必死でした」

酸素マスクが必要なほどだった呼吸は少しずつ落ち着き、1か月ほどたったころ、血液検査で感染症がおさまったことが確認されました。医師からは、そのまま退院せずに治療に入りたいと言われましたが、中村さんは「一度、出たいです」とお願いしたといいます。

1〜2日で決めなければならなかったこと

一度退院したいと願った理由のひとつは、入院中に向き合った、ある決断でした。中村さんは、将来の出産を希望していました。けれど、これから受ける治療によって、その可能性が著しく低くなると説明を受けたのです。

入院中に不妊治療のクリニックを訪ねて話を聞くと、もし治療をするなら、すでに感染症で1か月遅れているがんの治療開始が、さらに最低でも1か月は遅れることを覚悟してほしい、と告げられました。

「1日か2日で決めてくださいっていう感じだったんです。そんな大事なこと、1日2日で決められないって思いました。結局、治療に専念することを決めたんですけど、そのときはもうメンタルがボロボロで。だから一回、気持ちを落ち着かせたかったんです」

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治療の前に知っておきたい「妊よう性」のこと

  • がんの治療(手術・抗がん剤・放射線治療など)によって、妊娠するための力(妊よう性)が低下したり、失われたりすることがあります
  • 治療の前に、卵子や受精卵、卵巣組織などを凍結して保存する「妊よう性温存療法」という選択肢がありますが、がんの種類や進み具合、治療を始めるまでの時間などによって、できるかどうかは異なります
  • 考えられる時間が限られることも多いため、将来子どもを望む気持ちがある場合は、できるだけ早い段階で担当医に伝え、がん・生殖医療の専門家に相談しましょう。国や自治体による費用の助成制度もあります

抗がん剤治療と、手足のしびれ

がんが進行しているため、今は手術や放射線治療で取り除くことはできない。まずは抗がん剤で治療を始めましょう——。そう説明を受け、4種類の薬を使う抗がん剤治療が始まりました。6クールの治療は、取材の時点ですでに終えています。

最初の1、2回目は、2泊3日の入院で投与を受け、その後は自宅で療養しました。けれど、家に帰ったその日から、体が重くて起き上がれなかったといいます。

「倦怠感で起き上がれないし、ちょっと落ち着いたかなと思って外に出てみたら、めまいがして目の前が真っ白になったこともありました。吐き気や痛みは、薬で止めていた感じです」

なかでもつらかったのは、手足のしびれでした。しびれは出始めてから今も続いています。3回目ごろまでは膝にもしびれが出て、うまく歩けないことが一番つらかったそうです。

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抗がん剤の副作用は、我慢せずに伝える

  • 抗がん剤の副作用には、吐き気、倦怠感、手足のしびれ(末梢神経障害)などがあります。出方や強さは、使う薬や体の状態によって一人ひとり異なります
  • 吐き気止めなど、副作用をやわらげる薬や工夫があります。つらい症状は我慢せず、担当医や看護師、薬剤師に伝えましょう
  • 手足のしびれは、治療が終わったあとも続くことがあります。転びやすくなったり、細かい作業がしにくくなったりするときは、早めに相談してください

関連記事:「副作用と免疫の関係——「リンパ球を守る」治療の考え方」

「さきが頑張っているから」——生徒たちに支えられて

治療が始まったのは、ちょうどフランチャイズの英語教室を3月で辞め、独立したタイミングでした。最後の1回のレッスンはできなかったものの、独立後はオンラインで教えると決めていたことで、なんとか仕事を続けることができたといいます。

つらい時期にもかかわらず、中村さんは「比較的、前向きになるのが早かった」と振り返ります。その一番の支えになったのが、生徒たちでした。中村さんは、子どもたちにも自分の病気のことを話しました。

「みんな、『さきがそうやって頑張っているなら、僕たち私たちも頑張る』みたいな感じで、今まで以上に頑張ってくれたんです。体調が悪くて、お母さんから『今日は宿題を送れないと思います』ってLINEが来たと思ったら、その子から普通に『宿題やりました』って提出があって。体調悪かったのにやったの?って聞いたら、『さきが頑張ってるから』って。そういう子が、一人だけじゃなかったんです。泣きながら、私も頑張るって思いました」

友人たちの存在も、大きな支えになりました。そして、独立に向けて自分を追い込んでいた日々も、今振り返れば無駄ではなかったと感じているそうです。

「あのときに、メンタルが少し強くなっていたんだと思います。あの頑張りがなかったら、たぶん前を向けていなかった。そこは、頑張っていてよかったなって」

先生を信じる私と、情報を集める母

治療の情報との向き合い方は、親子で正反対でした。中村さんは、最初に少し調べて不安になったことから、それ以上は調べず、担当医の話をひたすら聞くことにしたといいます。SNSも、最初はまったく見なかったそうです。

一方でお母さんは、「ほかにもこういう方法があるじゃない」と必死に情報を集め、送ってくれました。担当医の口ぶりに「この先生、大丈夫?」と心配し、セカンドオピニオンを受けようと言ってくれたこともあります。

治療が遅れるのも怖い——。迷った中村さんが相談したのは、心から信頼している看護師の友人でした。

「その友達が、『先のことを考えるなら、セカンドオピニオンはいったん置いておいて、まずは先生を信じて進んでほしい。1日でも早く治療してほしい』って。母もその子のことをよく知っていて大好きだったので、その子がそう言うならって、一緒に決めることができました」

緩和ケアの先生との出会い

治療中、中村さんが「すごく助けられた」と話すのが、緩和ケアの医師との出会いです。その医師は、緩和ケアが「人生の最期に関わるもの」と思われがちなことに、強い思いを持っていたといいます。

「先生が、『患者さんが一番つらいのは、まさに宣告を受けたそのときなんだと思う』って言っていて。本当にそうだなって。まさにそのときに、先生に会いたかったってすごく思うんです。もっと早い段階で出会えていたら、すごくよかったなって」

病院で月に1回開かれている「がんサロン」にも参加し、同じがんの患者さんたちと話す機会を持っています。

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緩和ケアは、がんと診断されたときから受けられる

  • 緩和ケアは、人生の最期のためだけのケアではありません。がんと診断されたときから、治療と並行して、体のつらさや心のつらさをやわらげるためのケアです
  • 痛みや吐き気、しびれなどの体の症状だけでなく、不安や落ち込み、仕事や家族のことなど、さまざまなつらさが対象になります
  • 担当医や看護師に「緩和ケアを受けたい」と伝えるほか、がん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」でも相談できます

関連記事:「緩和ケアは「最期のケア」ではありません——診断されたときから受けられる、つらさを和らげるケア」

ランウェイ「SPOTLIGHT」へ

ランウェイへの出場は、主催のえりこさんからのDMがきっかけでした。中村さんのInstagramの投稿を見て、「すごく素敵だと思った」と連絡をくれたのです。

もともと、自分で発信しようとは思っていなかった中村さん。けれど、友人に近況を話したり送ったりするうちに、「もっと発信したほうがいいよ」と背中を押されていました。気持ちの整理が少しずつついてきて、「自分の発信が誰かの力になるなら」と思い始めていた時期だったといいます。

「えりこさんの話を聞いていたら、その熱量がすごく伝わってきたんです。そういう熱を持って活動している方のことは、やっぱり応援したい。えりこさんのお手伝いができるならうれしいし、せっかく見つけてくださったご縁も大切にしたいと思って、出演を決めました」

一時は「私、なんで出るんだっけ?」と一周して迷ったこともあったそうです。それでも、えりこさんや、強い思いを持った出演者の皆さんの姿にあらためて心を動かされたといいます。ランウェイを通して伝えたいのは、支えてくれた生徒たちへの思いです。

SPOTLIGHT CHALLENGER #12 中村 早希
生き様を魅せるランウェイ SPOTLIGHT 2026年11月13日(金)大阪市中央公会堂 開場13:30・開演14:00
イベント情報

生き様を魅せるランウェイ「SPOTLIGHT」

  • 日時:2026年11月13日(金)開場13:30/開演14:00
  • 会場:大阪市中央公会堂

チケットなどの最新情報は、SPOTLIGHT公式サイトをご確認ください。→ IROHAのSPOTLIGHT紹介ページ

これから——経験を生かして、挑戦していきたい

治療を始めたころは、体を大切にしながら、仕事もゆるやかに続けられたらと考えていたという中村さん。けれど今は、「すごく挑戦していきたい」と話します。

「もともとチャレンジすることが好きなんです。病気を経験して、今までと違う世界が見られたし、今までとは違う価値観も得られた。この経験を生かせたらいいなと思っています。話すのは全然上手じゃないですけど、英語を教えるだけじゃなく、人に何かを伝えていく仕事や活動もしていけたらいいなって」

がんの情報

子宮頸がんとHPVワクチン

  • 子宮頸がんの多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因と考えられています。HPVは性交渉によって感染する、ごくありふれたウイルスで、家族にがんの人がいるかどうかに関係なく、誰でもかかる可能性があります
  • HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるHPVの感染を防ぐワクチンです。小学6年生〜高校1年生相当の女子は、定期接種として公費で受けることができます
  • ワクチンを接種した人も、すべてのHPVを防げるわけではないため、20歳を過ぎたら定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です

中村さん自身も、がんになる前は子宮頸がんやHPVワクチンについての知識はなかったといいます。「がんになってから、そういう情報を目にしたり耳にしたりすることが増えました」

まだがんに直面していないあなたへ

「こういう症状があったら受診してください、ということは、私には言えないなと思うんです。でも、無理をしすぎないでほしい。今ここで頑張らなきゃって走り続けたり、このくらい大丈夫って思っていたりしたことが、長い治療につながってしまったのが私なので」

「女性に限らず、自分のことを後回しにする方って多いと思うんです。だから、まずは自分のことを大事にしてほしい。それを伝えられたらいいなと思います」

中村さんの発信・活動

中村さんのInstagramでは、「i'm a cancer survivor. life is beautiful! eat, laugh, love and be happy!」の言葉とともに、がん経験者としての思いや、カフェ・食・アート・京都など、日々の美しい瞬間が発信されています。noteでは、ジャーナルとして思いを綴っています。

IROHAは中村早希様を応援しています がんサバイバー/発信者 病気を経験しても、人生は美しい。
IROHAは、中村さんの活動を応援しています
発信・活動

IROHAから読者へのメッセージ

この体験から、いまできること
  • いつもと違うお腹の痛みや出血は我慢せず、早めに受診する。症状がなくても、子宮頸がん検診を定期的に受ける
  • 将来子どもを望む気持ちがあるときは、治療が始まる前に、できるだけ早く担当医に伝える
  • 抗がん剤の副作用や気持ちのつらさは、我慢せずに医療者に伝える。緩和ケアは、診断されたときから受けられる
  • 迷ったときは、信頼できる人や「がん相談支援センター」に相談する。セカンドオピニオンも選択肢のひとつ

IROHAは、特定の治療法や医療機関を推奨・保証する立場ではありません。一人ひとりが必要な情報を知り、納得して選べるよう、体験談や情報を届けていきます。

本記事は、中村 早希さんへのインタビュー内容をもとに、読みやすさを考慮して構成・編集しています。語り手の言葉は、意味を変えない範囲で表現を整えています。治療の経過は個人の体験であり、すべての方に同じ経過が当てはまるものではありません。また、がんの原因は一つではなく、記事中の振り返りはご本人の受け止め方として紹介しています。治療方法の選択や変更・中止は自己判断せず、必ず担当医など医療者にご相談ください。
「がんの情報」の出典:国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん」「子宮頸がん検診」「妊よう性 はじめに」「緩和ケア」、厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」(情報確認日:2026年10月14日)

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