大阪で保育士として働くはづきさん。2007年に子宮頸がん、2021年に乳がんを経験し、自らを「宇宙イチ陽気なWキャンサー」と名乗ります。いまは10年間のホルモン療法を続けながら、毎年10月のピンクリボン月間に乳がん啓発マルシェを主催し、インターネットラジオのDJとして、毎週笑いを届けています。
「子宮頸がんになろうが何だろうが、もう自分の人生の通過点なので。最後にどうなるか、その先のことを考えるようになりました」
2つのがんと、家族とともに過ごした中国での暮らし。どんなときも「じゃあ、どうする?」と前を向いてきたはづきさんに、これまでの歩みと、いま伝えたいことを伺いました。
- はづきさん/大阪府在住。保育士。中国で習った「中国結び」の雑貨をつくるハンドメイド作家としても活動。2人の息子の母
- 2007年、子宮頸がん(0期)。手術で治療を終え、その後の経過観察でも再発・転移はなし
- 2021年6月、乳がんと診断(ステージⅡB)。手術(同時再建)、抗がん剤、放射線治療を経て、現在はホルモン療法を継続中
- 乳がん啓発「PINC:RE:bornマルシェ」主催。インターネットラジオ「笑うあなたに福喜たる」DJ
1度目のがん——経過観察で見つかった子宮頸がん
最初のがんは、2007年の子宮頸がんでした。別の病気で入院した際の検査をきっかけに、3か月に1回の経過観察を続けていたはづきさん。そのおかげで、がんはごく早い段階、0期で見つかりました。
「3か月おきに診ていただいていたので、本当に0期で見つけていただいたんです。なので、切って終わりだったんですよ。ある程度、覚悟みたいなものはできていました」
手術後は10年の経過観察と言われていましたが、7年目に夫の転勤で中国へ渡ることになり、主治医と相談して通院を終えました。再発や転移もなく、子宮頸がんの治療は区切りを迎えました。
子宮頸がんは、検診で「がんになる前」から見つけられる
- 子宮頸がんは、がんになる前の段階(前がん病変)を経て進むことが多く、検診で早い段階に見つけることができます
- 子宮頸がん検診は、20歳以上の女性に2年に1回の受診が推奨されています。異常を指摘されたときは、医師の指示に沿って精密検査や経過観察を続けることが大切です
- 早い段階で見つかった場合、子宮の入り口の一部を切除する手術などで治療できることがあります
関連:国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん」
中国での暮らしが、考え方を変えた
はづきさんの前向きさの原点は、病気よりも、家族とともに過ごした中国での暮らしにあるといいます。丁寧な接客や、医療・食べ物の清潔さ。日本では当たり前のことが、当たり前ではない環境でした。
「それでも、そこで生活しなきゃいけないし、いろんな人とコミュニケーションをとらなきゃいけない。引きこもっていたり、ネガティブになっていたりしても仕方がない。生きていけないので。だから、今の私がいるのは中国のおかげだと思っています」
2人の息子さんの高校受験も、海外からすべて親が調べて準備しなければなりませんでした。年子のため、それが2年続いたといいます。「今思えば、精神的にしんどかったんだろうな」と振り返ります。
2度目のがん——「乳腺炎だろう」と思っていたしこり
日本への帰国を目前にしたころ、胸にしこりがあることに気づきました。以前、乳腺炎になったことがあったため、「たぶんそれだろう」と自分で思っていたといいます。
「日本に帰ってきて、しばらくしこりが気にはなっていたんですけど、2つ目を見つけたときに、いよいよ危ないかなと思って。多分乳がんだろうなって」
受けた人間ドックで、「この後すぐに病院へ行ってください」と告げられました。症状はしこりだけで、胸のへこみや出血などはなかったといいます。2021年6月、乳がんと診断。ステージはⅡBでした。
しこりに気づいたら、自己判断せずに受診を
- 乳房のしこりには、乳腺炎や良性のものもありますが、触った感じや過去の経験だけで見分けることはできません
- しこりなどの症状があるときは、次の検診を待たずに乳腺外科などを受診しましょう
- 乳がん検診は、40歳以上は2年に1回のマンモグラフィが推奨されています
くわしくは「「検診」と「気になる症状」は別もの。乳房の変化に気づいたら」をご覧ください。
治療——「つわりのひどい感じ」という説明に救われた
手術では、乳房を切除すると同時に、自分の背中の組織(広背筋)を使って乳房をつくる「同時再建」を受けました。その後、抗がん剤を4回、放射線治療を経て、いまは10年間のホルモン療法の4年目を過ぎたところです。
抗がん剤の前、副作用がとても心配だったはづきさん。主治医が、ほかの患者さんの言葉を借りて「つわりのひどいやつみたいな感じ」と教えてくれたことで、気持ちが少し楽になったといいます。
「すごくわかりやすかったんです。つわりだったら、ちょっと我慢できるかなって。実際に受けてみると、私は副作用が少ないタイプだったみたいです」
むしろつらかったのは、抗がん剤のあとに白血球が下がりすぎないよう打つ注射でした。「全身の骨を叩くイメージ」と説明されたとおり、全身が痛んだといいます。最後の治療のあと、注射を受けに行った病院で倒れてしまったことも。それでも、寝たきりで動けない日がずっと続いたわけではなく、「あなたは軽いほう」と主治医にも言われたそうです。
乳房再建と、抗がん剤の副作用対策
- 乳房再建には、乳房の切除と同じ手術で行う「同時再建」と、時間をおいて行う「二期再建」があります。方法も、人工物を使うものと、自分の体の組織を使うものがあります
- 抗がん剤の副作用で白血球が減ると、感染症にかかりやすくなります。これを防ぐために白血球を増やす薬(注射)を使うことがあり、骨の痛みなどの副作用が出ることがあります
- 副作用の出方は、人によって大きく異なります。つらい症状は我慢せず、担当医や看護師、薬剤師に伝えましょう
「お前は何も調べなくていい」——夫が支えてくれた
がんと告げられたとき、病気のことを調べるのは「すごく怖かった」というはづきさん。2つのがんのどちらのときも、調べ物はすべて夫が引き受けてくれました。
「子宮頸がんのときは、子どもたちもまだ2歳、3歳とちっちゃかったので、夫が『お前は何も調べなくていいから、子どもたちと遊んでいてくれ。俺が全部調べるから』って。だから、私より多分、彼のほうが病気のことに詳しいと思います」
調べれば調べるほど、まるで自分のことのように悪い情報ばかりが目に入ってくる。だからいまも、ホルモン療法でしんどいと感じても、むやみに検索はしないそうです。そばで支えてくれる人がいたことで、「治すことに専念できた」と振り返ります。
同じ薬を飲む仲間と話すと、心が軽くなる
ホルモン療法の副作用は、いまも続いています。けれど、それは目に見えないもの。普段の生活は送れているぶん、家族には理解してもらいにくいといいます。
「同じ薬を飲んで、同じような副作用がある方にお話を聞いていただくと、解決法も見つかりますし、自分の心も軽くなるというか。子宮頸がんのときは、同じ病気の方と一切交流を持たなかったので、それと比べると、自分で抱え込むことがないぶん、だいぶ楽ですね」
もう一つ、はづきさんが「もっと早く知っていればよかった」と話すのが、医療用ウィッグの助成制度です。知ったのは抗がん剤が終わってからで、当時住んでいた地域には制度がなかったといいます。地域によって後から制度ができることもあるため、細かな情報こそ届いてほしいと話します。
関連:「お住まいの地域で使える「医療用ウィッグの助成金」徹底解説【保存版】」
笑って、乳がんを知ってほしい——マルシェとラジオ
ハンドメイドの出店で知り合った作家さんたちに声をかけ、毎年10月のピンクリボン月間に、乳がん啓発マルシェを主催しています。2026年で3回目。お買い物を楽しみながら、講演や展示、痛みの少ない乳がん検診を受けられる病院の一覧などを通して、乳がんを知ってもらうイベントです。入場は無料。「一般の方にこそ来てほしい」という思いで続けています。
2026年7月からは、インターネットラジオ「みんなのゆめかなRadio」で、番組「笑うあなたに福喜たる」のDJも務めています。きっかけは、マルシェの立ち上げを手伝ってくれた乳がんの仲間でした。同じ局でパーソナリティをしていたその友人が2026年3月に亡くなり、その思いをつなげていきたいと、マイクの前に立つことを決めました。
「あんまり病気、病気する番組にはしたくなくて。中国での話や、保育士や子育ての面白い話、ときには病気の話も。とにかくタイトルが『笑うあなたに福喜たる』なので、ちょっとでもクスッと笑っていただけて、前向きになってもらえたらという思いで話しています」
楽しく乳がんを学ぼう! PINC:RE:bornマルシェ
- 日時:2026年10月24日(土)11:00〜17:00
- 会場:シェアアトリエ福寿舎(大阪府高槻市)/入場無料
インターネットラジオ「笑うあなたに福喜たる」
- 毎週水曜日22:00〜22:30(みんなのゆめかなRadio)。過去の放送もアーカイブで聴けます
まだがんに直面していないあなたへ
「なってしまったことをどうこう思っても仕方がないので、じゃあどうやって治しましょう、どうやって元の体に戻しましょうって。そう考え方を変えられたのが、私にとっては大きかったです」
「マンモグラフィは痛いっていうイメージがありますけど、痛みの少ない検診ができる病院もあるんです。お買い物のついででもいいから、乳がんのことを知って帰ってほしい。明るく、楽しく、前向きに、予防の一歩を踏み出してもらえたらうれしいです」
2つのがんを「人生の通過点」と言い切るはづきさん。その明るさの裏には、支えてくれた家族と、同じ経験をした仲間の存在がありました。
はづきさんの発信・活動
はづきさんのInstagramでは、マルシェやラジオの情報、治療と暮らしのことが発信されています。活動の詳しい紹介は、活動者インタビューもご覧ください。
- Instagram(@himawari_ka_san)——マルシェやラジオの最新情報、Wキャンサーとしての日々
- インターネットラジオ「笑うあなたに福喜たる」——毎週水曜日22:00〜22:30
- IROHA 活動者インタビュー:はづきさん
IROHAから読者へのメッセージ
- 子宮頸がん検診・乳がん検診を、年齢に応じて定期的に受ける。経過観察を言われたら続ける
- しこりに気づいたら、「前にもあったから」「乳腺炎だろう」と自己判断せず、受診する
- 調べるのが怖いときは、家族や信頼できる人、医療者に情報の整理を手伝ってもらう
- 目に見えない副作用やつらさは、同じ経験をした仲間や、担当医、「がん相談支援センター」に相談する
IROHAは、特定の治療法や医療機関を推奨・保証する立場ではありません。一人ひとりが必要な情報を知り、納得して選べるよう、体験談や情報を届けていきます。
「がんの情報」の出典:国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん」「乳がん」「乳がん 治療」「がん検診」「がん相談支援センターで相談できること」(情報確認日:2026年10月19日)
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